2009年 08月 22日
荒木経惟「トーキョー・アルキ」新潮社刊、2009年、モノクロ。 アラーキーが東京を歩き回って、写真撮って、いろいろコメントつけて、みたいな本。5l(ファイブエル)とかいうフリーペーパーに連載されていたものをまとめたものらしい。5lは「団塊の世代向けの雑誌」ということだから、中高年のお散歩ガイドも意図しているのか。毎回の散策コースもついている。写真だけみたい向きには、文字がうるさいか。 写真自体はあいかわらずというか、今さらアラーキーの東京スナップにいいも悪いもないんだけど、この10年くらいのアラーキーは街に受け入れられ過ぎている感じしてちょっとつまらない。周囲に溶け込むのはスナップの基本だけど、撮影者はあくまでレンズのこっち側にいないと、街となれ合ったような緊張感のないスナップになってしまう。・・・「レンズのこっち側」にいなきゃならないってのは、アラーキー自身が写真に写っているかどうかっていう話をしてるんじゃないですよ、念のため(^^;)。 街となれ合えること自体、うさんくささをプンプンさせながら写真家として露出し続けてきた末の到達点であり、これはこれですばらしい仕事だ。写真家人生の集大成ともいえる。あんな怪しげな風貌で、誰にカメラ向けても笑顔を返されるってのは、アラーキーぐらいだ。さんざんスナップして最後にカメラを渡して「次はおまえが撮れ」なんて、誰が言えるよ。 でもちょっと物足りないんだよね。 金もないしすることもないので、日がな一日ペンタックスのロクナナ担いで東京を歩きまわって撮った写真と、雑誌のスタッフと一緒におもしろおかしく東京を散策して撮った写真とが釣り合うわけはないんだけど、自分が鑑賞する分には「東京は、秋」とか撮ってた頃の方がいい。そこらは方法論の違いというか全然別の作品なんだよね、同じように東京を撮っていても。セットで見ると楽しめると思う。
by yas_tak
| 2009-08-22 15:35
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