2009年 11月 14日
英 伸三『潮風の季節』民衆社刊、1981年、モノクロ。 中学生の夏の遠泳合宿のドキュメンタリー。「教育写真集」とかいう大げさなタイトルがついているけど、どういう位置づけの本なのかよく分からない。夏の臨海学校についてくる写真屋のおじさんが、ドキュメンタリー写真の第一人者の英伸三さんだったと思えばよい。 埼玉県の和光中学は、毎年夏になると、1、2年生全員参加の遠泳を行う。プールでの訓練、水泳検定を経て、ハイライトは館山での遠泳大会。一番長い距離を泳ぐ班は、およそ6キロを2時間30分かけて泳ぎ切る。英さんのカメラは、春の体力作りから丹念に取材して、子供たちの青春群像とともにイベントの全容を余すところなく記録していく。 いまどきのドキュメンタリー写真というと、戦争とか貧困とかいう言葉が浮かぶが、もっと身近なところにもすばらしい題材があふれているという見本のような写真集だ。ただ、ホームビデオが普及した今となっては、地方の小さなお祭りや、町で暮らしている人の表情をスチルカメラ一本で追いかける取材スタイルは流行らないだろう。撮っても発表するところがないし、写真学校の卒業制作くらいでしかやらないのではないか。本書ももう30年くらい前の写真集だ。寂しい話だけどね。
by yas_tak
| 2009-11-14 11:21
| 写真集
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