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Never Being Boring

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2008年 06月 07日

『時差ボケ東京』村田賢比古

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 村田賢比古『時差ボケ東京』M&Y Grafix刊。カラー、2008年。

 黄昏時のスローシャッタを利用して丁寧に流し撮りした写真集。自転車や歩行者にはきっちりピントがきて周囲の風景は美しくぼける、というか流れる。流し撮りというと、高速で移動するクルマや列車を撮ろうと思うのが普通なので、このアイデアは素晴らしい。
 
 実は、我々が日常生活で視ている風景は、ここに掲載されている写真程度にぶれている。脳はそれを無数の残像として処理し、「世界は静止しているものだ」というフィルタをかけることによって、人間が動いていることを認識している。逆に言うと、この写真が単なる流し撮りでない生々しさを感じさせるのは、視覚の認識速度まで踏み込んだ上での慎重な設定があるからじゃないか、とそんなことを考える。
 
 スペインのテテ・アルバレスというアーティストが、同じように歩行者を流し撮りするんだけど、あちらは日中にNDフィルタをかませて周囲の風景が判別できないくらい流す。『時差ボケ東京』では周囲を怪しく美しくぶらしているのに対し、そちらは風景をすっ飛ばしてレーシングカー並の疾走感を与えているという点で、両者は正反対の効果。テクニックは似ているんだけど仕上がりは全然違う。
 
 本書は自費出版のようなので普通の本屋さんでは買えない。自分は神保町の「ブックダイバー」というお店で買った。
 
 作者の村田賢比古さんは、「Kai-Wai散策」という有名なブログのwebmaster。本書の取扱店も紹介されている。


http://mods.mods.jp/blog/

by yas_tak | 2008-06-07 08:24 | 写真集


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